2026.1.05
田中書店株式会社 田中 佑輝さん
田中書店の店舗統括マネージャーとして働く田中佑輝さん。東京の大学卒業後はシステムエンジニアとして3年間勤務し、その後は他店で本屋の基礎を学んでから地元・都城へ戻りました。書店の現場は想像以上にアナログで、発注がFAXなど驚きも多い一方、工夫しがいのある仕事ばかり。妻ヶ丘店では学生客も多く、イベント企画やコラボで“また来たくなる本屋”づくりに挑戦しています。

システムエンジニアから、本屋の世界へ飛び込む
田中さんのキャリアは東京の大学生活から始まり、卒業後はシステムエンジニアとして3年間勤務しました。効率化や仕組みづくりを追求するデジタルの世界は刺激的でしたが、次第に「自分の力を地元・都城で生かしたい」という思いが強くなっていきます。その頃、家業である田中書店の存在を改めて意識し、本屋の仕事について学ぶため、まずは他店の書店で勤務することを決意。売り場づくり、在庫管理、接客、お客様の動線など、本屋の基礎を一つひとつ現場で吸収していきました。
「本屋って、想像以上に奥深い」と感じた経験が、後の田中書店での仕事に大きく生きています。
そして、しっかり土台を固めたうえで都城へ帰郷。いよいよ家業である田中書店での挑戦が始まりました。
ところが本屋の世界は、予想していた以上にアナログそのもの。商品の発注はFAX、棚づくりはすべて手作業──効率化とは真逆の仕事に驚いたといいます。しかし田中さんは、その不便ささえ「面白い」と前向きに捉え、「本の持つ魅力をどう届けるか」を追求する日々が始まりました。学生の来店が多い妻ヶ丘店では、若いお客様の声がダイレクトに返ってくるため、その学びがより実践的なものになっています。

“来たくなる本屋”をつくる。アナログだからこその魅力
田中さんが大切にしているのは、ネット社会でも「本屋に行きたい」と思ってもらえる場所づくりです。スマホひとつで何でも買える時代だからこそ、本屋に求められるのは“体験”。
「並んでいる本を眺めたり、偶然の一冊に出会えたり。来店する楽しさをどう作るかが勝負なんです」
その思いから、イベントやフェアの企画、地域企業とのコラボなど本屋の新しい可能性に挑戦。作家やクリエイターを招いた企画や、学生向けのワークショップなど、妻ヶ丘店ならではの仕掛けも増えています。
書店の仕事はアナログな作業が多く、商品管理・棚づくり・POP制作もすべて手作り。だからこそ工夫の余地が多く、スタッフ同士でアイデアを出し合いながら“温度のある書店”をつくっています。
教科書販売の時期は特に大変ですが、多くの学生が必要とする一冊を届けられたときの達成感は大きいといいます。
「学生さんや先生に喜んでもらえたときは、本当にうれしいですね」
その言葉から、書店の現場の熱量が伝わってきます。

家族と地域に支えられ、書店の未来をひらく
田中さんの仕事を語る上で、奥さまの存在は欠かせません。
事務として店舗を支え、時にはイベント準備や売り場づくりに加わることも。「家族で書店を運営している感覚が、とても心強い」と微笑みます。
また、地域の企業・団体とのコラボを通じ、本屋を“文化の交差点”にしたいという思いも強く持っています。
「本屋には、人と出会い、アイデアが生まれ、まちが元気になる力がある」
ネット社会の中で、リアルな場としての価値をどうつくるか。そこに田中さんの挑戦があります。
妻ヶ丘店という立地も大きな武器。学生が多く、若い読者の声を直接聞ける環境は、新しい企画のヒントにもつながっています。
東京での経験、SEとしての視点、都城での日々──それらが組み合わさり、田中さんの“新しい書店づくり”は続いています。
アナログの良さと創造力を武器に、田中書店の未来を静かに、そして確かに形づくる存在です。